インプラント症例紹介
01先天性欠損の上顎側切歯に対するインプラント治療
― 患者さんの将来を見据えた、慎重かつ継続的なアプローチ ―
本症例では、上顎の前歯の一部(左側側切歯)が生まれつき存在しない患者さんに対し、
インプラントを用いて機能と審美性を回復したケースをご紹介します。
欠損した部位が前歯部という見た目に大きな影響を与える場所であり、
また骨や歯ぐきの状態にも制限があったことから、
治療計画の立案から術後のフォローに至るまで、一つひとつの判断が重要な症例でした。

初診時の状況と診断
患者さんは、長年前歯の欠損を気にされており、
「自然な見た目で、しっかり噛める状態にしたい」とのご希望をお持ちでした。
診察の結果、左右の歯とのスペースが非常に狭く、
インプラント体を入れるための骨量も不足している状態であることがわかりました。
さらに、歯肉が薄くデリケートな状態(いわゆる“薄い歯肉タイプ”)のため、
術後に歯ぐきが下がってしまうリスクも高いと判断されました。
このような条件では、治療そのものの技術だけでなく、
“その後、どのように変化していくか”まで見通した計画と配慮が求められます。
また、見た目の自然さだけでなく、
口腔内全体の健康や将来のメンテナンス性も大切な要素となります。
当院では、こうした診断を行う際には院内に設置された歯科用CTを活用し、
骨や組織の状態を三次元的に把握したうえで、
安全性を高めた治療計画を立てています。
治療の選択と方針
患者さんと丁寧に相談を重ねた上で、
今回はストローマン社製のティッシュレベル・ナローネックインプラントを選定しました。
このインプラントは狭いスペースでも安定して埋入でき、
周囲の歯ぐきと調和しやすい構造になっており、
組織への侵襲を最小限に抑えることができます。
埋入手術は「必要以上に骨や歯ぐきを切開しない」低侵襲な方法で実施しました。
その際、専用のオペ室で清潔な環境下のもと、
インプラントの埋入位置や深さにも細心の注意を払い、
将来の歯肉の安定を見据えた設計を行っています。
この治療において私たちが最も大切にしたのは、
「治療が終わったときに満足するだけでなく、その状態が10年、20年と続くこと」です。
そのためには、治療直後の仕上がり以上に、
患者さんご自身が継続して管理できること、
そして医院としてしっかりサポートし続けられる体制が不可欠だと考えました。

術後の経過とメンテナンス
埋入手術の後は、インプラントのケアに関する専門知識をもつ
「インプラント学会専門衛生士」による丁寧なメンテナンスと、
患者さんへのセルフケア指導を継続的に実施しました。
患者さんも口腔衛生に対する意識が高く、
指導にしっかり取り組んでくださったことが、良好な経過につながっています。
結果として、治療から約20年が経過した現在も、
歯ぐきの退縮やインプラント体の露出といったトラブルは一切なく、
見た目も自然なまま保たれています。
噛む力も安定しており、
患者さんは今も定期的なメンテナンスに通院され、健康な状態を維持されています。

まとめ 〜 “長く安心して使える”インプラント治療のために 〜
本症例は、骨や歯ぐきの状態から判断すると、
一般的なインプラント治療と比べて難しい点の多いケースでした。
しかし、患者さんとの丁寧なコミュニケーションと、
“長期的に健康を守る”という視点に立った治療計画とケアを通じて、
20年という長い時間を経ても変わらず快適に過ごしていただいています。
当院では、これまでに500本以上のインプラント治療を行ってきた経験をもとに、
患者さんの状況に応じた最適な治療方法をご提案しています。
インプラント治療は「入れて終わり」ではありません。
その後の生活がどれだけ快適で、自然で、健康を保てるかが、
治療の本当の価値だと私たちは考えています。
これからも、患者さんの将来を見据えた、
安心できる治療と継続的なサポートを大切に、
ひとつひとつの症例に丁寧に向き合ってまいります。
インプラントの料金について
詳しくは料金表ページ( https://dairaku.jp/price.html#implant )をご覧ください。